本の話

日本に帰ったときに毎回会う友人がいる。
友人の勧める本に外れがなく信頼しているので、お勧めの本を聞く。
前回会ったときは、本屋で待ち合わせて、武田泰淳『富士』平野啓一郎『決壊』丸谷才一『女ざかり』など友人が勧めるがままに買った。

そのとき「武田泰淳知ってる?」
と聞かれ、ちょうど日本へ帰る機内で武田百合子の『富士日記』中巻を読んできたところだったので喜んで、
「知ってる!武田百合子の夫だよね!」
と答えたら、「普通逆だよね」とふっと笑われた。

その友人には以前、内田百輭も勧められ、一冊読んでみたときはあまりぴんとこなかったのだが、『ノラや』を読んで病的なところに惹かれて『百鬼園随筆』を読んだら大好きになった。
今や内田百輭が師事したというので、夏目漱石にも興味を持ちだした次第で、前回帰ったときに古本屋で『文鳥・夢十夜』を買った。
夏目漱石は今の私にとって、百輭先生の師匠なのだが、友人にはまた「逆だよね」と笑われそうだ。