飯くったか?

夜になって、その日の昼食を食べたかどうか、思い出せない、ということがあった。

十代、二十代といつでもお腹が減っていた私は、一食でも抜いたら、食べていないことが気になって、ずっと食べ物のことが頭から離れなかった。三十を過ぎて、いつでもお腹が減っているということはなくなり、年々食べられる量が減ってきているが、それでも食べたかどうかを覚えていないなんてことは今まであり得なかった。

夕飯を食べて、その日買ったものの値段を手帳に控えてたときに、今日、お昼どうしたっけ? とふと思って、思い出せなくて、そんなわけはないと思って、立ち上がって机の前をうろうろしたが、思い出せなかった。
無意識に一食抜いてしまったのか、食べたのに思い出せないのか、それすら分からない。
不安になって、夫に言うと、
「そんなの俺しょっちゅうだよ」
と何でもないことのように言った。

これから、こういうことが何度も起こって、何でもないと思えるようになるのか。
それは、いいことなのか悪いことなのか、今の私には分からない。確かなのはこれから今までに経験したことのないことが始まるということだ。