30代

「ドント・トラスト・オーバー・サーティー」という言葉をはじめて知ったのはオーケンのエッセイだったかと。

最近、この言葉をよく思い出す。

30になるまでは「30になったらやばいらしい」ということをよく友達と話していた。実際、年上の友達からも聞いた。
主に太ったら最後、風邪が治りにくい、というような肉体的な衰えの話。

「ドント・トラスト・オーバー・サーティー」もそうだけど、30代というとネガティブな話ばかり。

誰も、30代がおもしろい、なんて言ってなかった。
しかし30代に突入した今、私は声を大にして言いたい。30代はおもしろい、と。

何がおもしろいって、昔を懐かしめるようになったのが、おもしろい。いま懐かしむということができるようになったばかりなので、尚更おもしろいんだと思う。

先日恵比寿ガーデンシネマの休館を知って、ああ、あの映画館にはウッディ・アレン作品がかかるたびに足を運んだよ、と懐かしんだのだけど、これだって、20代に実際に映画館に行っていたという経験があってこそ、できること。

昨日淀川長治の話を読んだときには、ああ、今の時代には誰もが知っている映画評論家っていないんだなあ、私の時代には淀川長治と水野晴郎がいてよかった、と思ったり、いちいち、楽しい!

そして、きっと同年代の人たちが社会で活躍するようになっているので、巷にも「ああっ!懐かしい!」と思うようなものが出てきたりして、こういう楽しみって年を追うごとに増えてくんだと思う。

年を取るのって悪くないんじゃない、と思っている。
ただ、自分が信じるに足るかどうかという話になると、当てにはならないと思うので、「ドント・トラスト・オーバー・サーティー」っていうのは、なるほど、言い得て妙、などと思ったりもする。